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まずは毎日かくこと

選挙

アメリカの中間選挙がありました。ブルーウェーブと呼ばれる民主党の躍進で、下院は民主党過半数を制したそうです。
私はアメリカ人ではないし、住んでいたのも二年だけだし、政策のこともよくわからないし、特定の強い思想があるわけではありません。ただただ、庶民の一感想ですが、よかった、と思いました。

私の住んでいたところは、アメリカでも一、ニを争うリベラルな街でした。ダイバーシティを大変重視していて、英語がろくに喋れない東洋人の私ですが、差別らしい差別はほとんど受けたことはありませんでした。
小さな子供がいて、地元の保育園に入れていたので、私の知っているアメリカ人は、小さな子供のいる父親や母親が大半です。共働きでそこそこの暮らしをしているか、旦那さんがベンチャーで大成功していて奥さんは家にいる、といった家庭で、白人もヒスパニックも黒人もアジア人も、インド系やヨーロッパ系移民もいました。保育園の先生はヒッピーみたいな雰囲気のある女性でした。保育園では、ハロウィンももちろんやりますが、インドのお祭りも中国の旧正月もやりました、お願いすれば日本のお祭りもやってくれたかもしれません。
彼らは、二年前の選挙のとき、当然ヒラリーが大統領になると信じて疑っていない様子でした。女性たちは、ヒラリーのシンボルとして、久しく着ていなかったパンツスーツをクローゼットから引っ張り出して、投票に行ったとはしゃいでいました。
「夜ふかしして選挙を観るの?」という問いには「まぁ、間違いないとは思うけど、万が一ってことがあるからね」と答え、勝利を疑っていないようでした。
特に女の子の親たちは、アメリカ初の女性大統領誕生の瞬間を見せるべく、子供と夜ふかししてテレビの前にスタンバっていたといいます。
リベラルな彼らにとって、マイノリティに差別的発言を繰り返すトランプは、恥知らずで、自分たちのリーダーに相応しくないと、本気で思っていたようです。
私も、あの街の、たとえ金持ちの偽善であっても、平等と愛を本気で信じようとする空気が大好きでした。

だから、トランプ大統領の誕生は、まさか現実のこととは思えませんでした。

いやでも、実は、なんとなく嫌な予感はあったようにも思います。これもあくまで一個人の、ちょっとしたニュースなどを観ていて感じた程度のことですが。
ヒラリーは、アメリカ人みんなが支持するには、あまりにインテリすぎるようでした。現に、私の周りの人々は、どちらかというとサンダースを支持していて、でも彼はあまりにおじいちゃんで。一方、トランプ陣営はゆるぎない雰囲気がありました。
「これ、さすがにトランプが勝つことはないにしてもさ、半分近くトランプがとっちゃったら、アメリカが二分されちゃってすごい気分悪い感じになってしまうのでは」と、日本人の友人と話したりもしてました。

選挙の翌日、Facebookの書き込みには、世を憂うメッセージが並びました。「あんな差別主義者が自分の国の代表だなんて、なんて子供に説明したらいい?」と困惑する声にこたえるブログがリンクされたり、「この先どんなことが起きようとも私はみんなのことが大好きよ!」と書き込む母親もいたり。「あんなことがあったけど、子供たちを不安がらせてはいけない、昼間学校では選挙の話は無しにしましょう」という先生からのメッセージがメーリングリストを流れてきたりもしました。
「私の主人は移民だけど、私と一緒になったから大丈夫。でも、彼の友人たちにはアメリカに身寄りのない移民もいる、その人たちをどうやって支えてあげられるんだろう」と悲しそうにつぶやく友人もいました。「こんな時期に帰国なんて、かえって良かったかもしれないよ。よかったらうちの子も、あなたの子供ってことで日本に連れて帰ってほしいなーなんて、冗談だけどさ」と寂しげに笑う、白人の友人もいました。

でも、彼らは決して、悲観するばかりではありませんでした。子供たちを連れて、大きなプラカードを作って、連れ立ってパレードをしたのです。区議会議員みたいな自治体の委員に立候補した友人もいました。"#Me too"も、彼らのFacebookで知りました。
Facebookには、中間選挙前も"Vote! Vote! Vote!"という書き込みが並びました。「投票したよ!」と"I Voted"のスティッカーを貼った家族写真をアップする友人もいました。
これがアメリカなんだなあ、と、少しじんとしました。

その割に、中間選挙の結果については、冷静に受け止めているように思われます。当然の結果だ、と思っているのかもしれませんし、もしかしたら上院まで乗っ取って、トランプを引きずりおろすくらいのことを考えていたので、期待外れだと思っているのかもしれません。

繰り返しになりますが、アメリカがどうあるべきか、なんて、私に論じられるだけの知識も覚悟もありません。
ただ、私の大好きな街と、大好きな友人たちが、少しでも心穏やかに暮らせるといいなと願うばかりです。